●木曽人・村地忠太郎「・・・木と一生懸命向き合ってきただけ」
木曽路ドットコムよし彦本店から歩いて2分、木曽川がすぐ真下を流れる村地さんの仕事場には、常に川の瀬音が聞こえ清廉な空気が満ちています。86歳の現役職人の仕事ぶりは、無駄がなく、驚くほどスピーディーなものです、木を薄く挽き、曲げて作り上げる「曲物(まげもの)」の木地は、良質な木曽ひのき・木曽サワラ、などの木でなければできない質の高いものです。
「木地師はあくまでも木地師、製品になる素地づくりだでなぁ」・・・個展の話なども断り続け、80余年という歳月木地師一筋の村地さんは、静かにこう言い切りました・・・「器用さは二の次、木と一生懸命向き合ってきただけ」
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【村地忠太郎】
大正6年長野県木曽福島町生まれ、95歳、現役の曲物師職人歴は74年に及ぶ、昭和59年町民表彰・平成8年県卓越技能者に、その精緻な技術力から生み出される作品は、1993年の雅子様の納采の儀の目録台など数々の皇室の行事にも使われている
←雅子様の納采の儀の目録台と同じもの
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1.木を割ったまま使う「割柾目漆器(わりまさめしっき)」は、木曽の良材ならではの木地です(当店よし彦オリジナル)
人の力で削るのではなく、木が割れるようにまかせる”割柾目”「へいだもの(割ったはもの)は丈夫だ」と村地さんは言われます |

2.どんな木でも割って使えるわけではありません、木をへグ(割る)ことができるのは樹齢200年以上の木曽ひのき・木曽サワラ、ナタで少し割ってから、仕上げは堅い木でつくった木の包丁で割っていきます、ビリビリビリと木が小気味良く割れていきます |

3.サットウというナタで、薄く挽いた木地の厚みを均等に削っていきます「一番気を使うところ」と村地さんが言われるところで、息をつめて集中した作業が続きます、木を削る音が作業場にかすかに響きます。 |

4.薄く挽いた木地を、7日間ほど水につけておき、曲げの作業に入ります。
お湯を均等にかけ、なじませますお湯の染みた木地から木の香りが立ち昇ります、村地さんは手際よく作業をすすめます。 |

5.コロを木の上を何度か往復させることで曲げていきます、体全体を使って、無理なくスムーズに木が曲がっていく様は、木の持つ特性を村地さんが引きだしていくようです |

6.曲げていった木地を挟んで形を作っていきます、このあと底板を作る作業が別にあります。
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村地忠太郎の道具 |
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【写真1】コロ・木地を曲げる道具「昭和7年」と書かれていますが、村地さんの道具の中では”新しい”もの
【写真2】ナタ・「刃の部分が元の太さの3分の1くらいになっちまった」という先代からのナタは、なんと100年以上使われてきたもの
【写真3】繊細な職人の手とカンナ・こんな小さなカンナも村地さんが使ってきたもの
【写真4】ノコギリ・いくつかのノコギリを使い分ける、村地さんの持つ部分はすっかり擦り切れて木と向き合ってきた年月を感じさせる |